Maiibuモデルのご紹介 - Thomas Surfboards - アウトロ

 Shit yeah fart yeah. オーストラリア・ヌーサを拠点にサーフボードを作り続けているThomas Surfboard / トーマスサーフボードより、「Malibu/マリブ」モデルのご紹介。5年前くらいから開発され、3年ほど前から正式にリリースされたこのモデルは、昨年末をもってブランド史上最も求められた/売れたモデルに君臨したとの知らせがあり、ここ最近のカスタムオーダーや問い合わせも急増してきたので、これを機にトーマスブログを和訳しながら、今一度ご紹介いたします。

↑2021年のワールドサーフリーグ・ロングボードチャンピオンシップ最終戦の準決勝atカリフォルニア・マリブにて、トーマスサーフボードからリリースされている自身のシグネチャーモデル「ハリソンコンセプト」にて、ハイスピードで比類なき完璧なハングテンをメイクするハリソン・ローチ。だが、それよりもフリップテールノーズライダーを操る他のコンペティターによる、スロウで滞在時間の長い露骨なハングテンが高く評価された。

 トーマスブログでは、まずこう書かれています。ー「マリブの最初のアイデアは、ハリソンが2021年のWSLツアーで世界ランキング2位となり、マリブのイベントでセミファイナルで敗退した後に生まれた。ハリソンは、波の最もクリティカルな部分(以上の画像参照)で可能な限りスピードを出すことを常に考えていた彼のノーズライディングへのアプローチが、他のコンペティターがフリップ・テール・ノーズライダーで行っていた緩急をつけたハングテンに比べて高いスコアを得られていないと感じていた。我々はノーズライディングについて、波のポケットでクリティカルかつタイトであるべきという意見には変わりないが、コンペティションのためには、波のフェイスのどこであろうと、あからさまでゆっくり燃えるようなハングテンの方が、ハリソンの速くクリティカルなタイトファイブよりも高得点になることは認めた。」と。

 

 つまり、コンペティションにおいてどう高得点をだすか?というアイディアのもとに、今回のデザインが生まれています。そして波のどんな場所にいても、ハングテンができるようにということに焦点が当てられています。

 

 そして一呼吸おいて、こう書き綴られています。ー「また、一般的なのロングボーダーは、ノーズをハングしたか?していないか?ということ以上に、波のどこでハングしたか?ということにあまり関心がないように感じた。だから、ハリソンの2023年のタイトル・キャンペーン(そう、彼は優勝したのだ)と、私たちのお気に入りの一般的なロングボーダーのために、新しくて特別なものを作ろうという意欲が倍増したのだ。」と。

 

 つまり、ノーズライドの質にこだわりすぎずに、ハングできたか?できなかったか?といった「し易さ」に重点を置いたということ。

 

 基本トーマスやオージーウェーブやブランドは、ハイタイ(ハイアンドタイト)なノーズライドがデザインベースにありますが、世論がそれとは異なるものを求めるのあれば、つくってやろうじゃないか、Rebel的なダブルモチベーションから、マリブモデルは生まれました。 

 ボードのデザインについては、こんな感じ。ー「ハリソン・モデルから実績のあるロッカーとレイル形状を拝借し、まず安定性を高めるためにノーズに幅を持たせた。また、ノーズコンケーブがゆったりとなじんでいるため、リフトが生まれ、スピードが落ちるため、セクションでアウトランすることがない。」

 

 ハリソンコンセプトをベースにノーズ幅を広げて、ゆったりめのノーズコンケーブを入れるのは、ボードをスロウダウンさせるベーシックなデザイン。

↑幅を広げたノーズエリアとコンケーブを活かしたハングテン。スプレーが後ろではなく横に飛んでいることから、ボードをうまくスロウダウンさせているのがわかる。ハリソン・ローチ。

ー「メローなロールからミディアムフォイルの50/50レイルは、典型的なトーマス・スタイルでテイルが薄くなる。カリフォルニアスタイルのノーズライダーがテールに過剰な幅とフリップを持つという現在のトレンドとは異なり、Malibuはノーズライダーとしては機敏さを保ち、レールに乗ればクラシックなオーストラリアンインボルブメントを感じることができる。ターンに最適なボードだ。」

 

 この辺は、ハリソンモデルのプロファイルをそのまま継承しています。インボルブメントならではの、ウォーキング時の加速やトリムはそのままに、そのスピードを最大限に活かしたカットバックやテールアクションを行う一連の流れは、このマリブモデルでも楽しむことができます。

↑若干ノーズ幅を広げた分、ターンはピボット気味になりつつもしっかりとしたドライブをかけることができる。テールが捻り込まれたマニューバーライン、ならびにスプレーの質(この場合スプレーが厚く、粒そのものも大きめ)を見るに、ハリソンコンセプトよりもややノーズライダーとしてのテールコントロールが主流となる。ハリソン・ローチ。

ー 「この企画がスタートしてから、レイシー、フスニ、アルビン、T・ペインなど、チームライダーのために何本かマリブを作り、多くの好意的なフィードバックをもらった。そして、若干の変更やバリエーションを加えながら、現在のマリブにたどり着いた。私たちが発見したのは、マリブのデザイン特性が、エリートにも日常的なロングボーダーにも、完璧なサーフィンにもそうでないサーフィンにも対応するサーフボードに結実しているということです。ターンもノーズライディングも簡単で、サーフィンに憧れを抱いている人には最高だ。しかし、最高のサーファーたちが繰り広げるハードコアでハイレベルなサーフィンを楽しむこともできる。トーマス・サーフボードでは常にデザインを試しているので、マリブのようにハードに刺さるものがあると血の気が引くほどうれしい。ノーズライダーとして日常的に使えるこのモデルは、今やトーマス・サーフボードのトップセラーです。もっと詳しく知りたい方はご連絡ください。」

 

とのこと。「テイクオフも早くてターンもノーズライドも簡単です」という謳い文句は、20年以上使われ続けてきた単調かつ空虚なコピーであり、もはや聞くのも堪え難い。のにも関わらず、今でも多くのメーカーは、そのおぼろげな光を追い求めて日夜サーフボード開発に勤しんでいます。ー答えはすでに出ているのに。

 

トーマスはこのシングルフィンロングボードがリバイバルする前の、90年代のオージーロングボードシーンを体現してきています。時代を通したロングボードデザインの探検と、オージービンテージマルから得た欠かすことのできないエッセンスが詰め込まれているマリブモデル。Keeper2.0やTown Bikeといった、同じような謳い文句を放つモデルに比べても、レール形状しかり、そのオールラウンドな要素は濃いめ。トーマス渾身のマリブモデルに、今シーズンは注目してみたいと思います。

 

トーマスサーフボードは随時オーダーを受け付けています。

お気軽にご相談ください。

 

Yuta

 

アウトロ

 ちょっと乱雑だけど、湧いてくる思いをそのままに、このアウトロを書きます。

 

 およそ5年前。ハリソンコンセプトをアップグレードさせる案は、必然性に迫られ静かにスタートしていました。エブリデイロングボーダーからは、常にノーズライドのしやすさが求められているため、既存のハリソンコンセプトのノーズ幅を広げるという案は、もはやロングボードを作る上では当たり前のセオリーでした。そして最初に出来上がったプロトタイプの1本目は、ノーズこそリフトするものの、ステップバック時にややアップザラインしていまい、ハイラインでスタックすることもしばしば。そのせいもあり、バックステップがスムースに行えず、いい状態でカットバックに入ることがしずらい状況でした。まさにハリソンのライディングの醍醐味を消してしまっていたのです。そもそも簡易的なアウトライン、ワイドノーズやソフトレールのいずれも、ハリソンの好みではなかったので、このアップグレード案というのは、彼が心底望んでいたわけではないでしょう。当時ハリソンは、ステップデッキ/ハリソンコンセプトをメインクイーバーにあてがい、プロツアーもそれでフォローしていました。ここ1番でハリソンコンセプトを持ち出したのは、それだけ自分の考えとサーフィン、ボードデザインに自信を持っていたからです。

 

冒頭に「マリブの最初のアイデアは、ハリソンが2021年のWSLツアーで世界ランキング2位となり、マリブのイベントでセミファイナルで敗退した後に生まれた。」と紹介したこの時のこと。自分はライブで観戦していましたが、今でのあの時のハリソンが負けた悔しさを覚えています。確かに近年稀に見る接戦でした。が、このシーズンはロングボード改革として、ジャッジングクライテリアがトラディショナル寄りに変更されてすぐの頃で、まだジャッジングの精度やその目的・ゴールはどこか?彼らの姿勢や様子を伺うシーズンでもありました。そもそもワールドタイトルやツアーに興味がなかったハリソン・ローチですが、WSL役員になったデボン・ハワードの要請を聞き入れて、ツアーに参加していました。改革に対しての興味本位もあったでしょうが、まずはデボンさんへの敬意を示してツアーに参戦することになったのです。

 

あの時、ハリソンが負けていなければ...ロングボードシーンの今は、劇的に変わっていたと思います。(結果、その試合ではジョエルチューダーが優勝しますが、デボンさんとジョエルによる大規模な改革は、やや90年代の遺恨を引きずってしまった印象が残ってしまいました。自分はこの改革を出来レースではないのか?と疑いを持ったほどです。) それほどまでに、パーフェクトなライディングを披露していたハリソンだったし、ロングボード改革を最大の意図とするならば、あの時ジャッジはハリソンに高得点をつけてあげるべきだった、勝たせてあげるべきだった、そう思います。その時に対戦していたのが、ベン・スキナー。フリップ・テール・ノーズライダーを操り、あからさまなハングテンでアピールしましたが、ターンに関しては、あからさまにハリソンの方が優れていました。でも結局はノーズライド主体のジャッジング。それもスピードやら、前後のつながり、スムースでシームレスなポイントは無視した、ハングテン重視のジャッジング。トラディショナル=シングルフィンやノーズライドではないのに。その点をしっかりと判別できなかったWSLとジャッジには、かなり悲しい思いをしましたし、その思いを感じていたのはハリソンも同じでした。だったら、いいよ。ジャッジがそう採点するのであれば、お望みどおりやってやるよ。と。順方向にキレたのです。

 

そして、翌年。ハリソンはジャッジもオーディエンスも納得せざるを得ないようなライディングで、ワールドタイトルを獲得します。使用したボードは、フスニから借りてきた「Scoop Tail Nose Rider」。オーストラリアを出発する直前に、このボードを持っていくことに決めたと聞きました。その頃、マリブモデルの原型も存在していたのに。なぜScoop Tail Nose Riderを選んだのか?それは、先に挙げたプロトタイプの改善点をまだクリアすることができていなかったのです。というよりも、そもそもハリソンはクリアすることすら興味がなかった。だって、わざわざ自分の信念に背いて、どこでもノーズライドできるようなデザインを求めていなかったし、それらの要望は他のモデル、ステップデッキとスクープテールなどで叶えることができていたからです。ひいては、要はノーズライドだろ?スロウでわかりやすくて、多少ひっかかっても、ハングテンしてりゃいいんだろ?と。順方向にキレたのです。

 

 もうね、あっさりですよ。ワールドタイトルを。あっさりと獲得ですよ。わかっちゃいましたけどね、そんな星の元にいることは。10代の頃からわかっちゃいましたけどね。でもね、こうもね、簡単にやられるとね。腹立つっていうか、なんかね。理解できない範囲の話というか。こんなことがあるんだ実際っていう。WSLという組織がものすごく小さく見えちゃって。ヤツは知っていたんですよ。何がトラディショナルで、何がコンペティションで、何が古くて新しくて、何がジャッジングか、もろもろすべて。ジョエルのもとで、ぼくら修行してきましたから、いわゆる教えの核の部分のひとつです。ワールドタイトル獲得後、コロナも治まって来日した時、「ヨー、セカイチャンプおめでとう。このコロナパンデミックの3年間何してたんだい?」と聞いたら、「ワールドタイトル獲得するためにショートボードに乗ってリップしまくってたぜ。笑」と冗談っぽく笑いながら答えた時に、ああコイツは本当に...と思いました。そこで「来年もチャンプ狙うの?」って聞いたら「ファックノー!笑」ですよ。あんなん2度とやるか、みたいな。コンテスト当日は、ほとんどが二日酔いもしくは夜遊び明けというスタイルで、さくっとワールドチャンプですよ。嫌なんでしょうね、本心は。でもめちゃくちゃ簡単にワールドタイトル獲っちゃう。もう嫌になっちゃうの通り越して、笑いが止まらないって。笑

 

ー つまりハリソンにとって、ワールドタイトル獲得は、本気になればいつでもできる状況にあって、したがってマリブモデルは彼にとってそこまで大きな課題でもなかったわけです。かなりローキーだったかと。そうした背景と流れから、マリブモデルはその他のライダーたちのテストやフィードバックをもとに、先にあげた改善点をクリアしてきたわけですが、ハリソン自身はほとんど興味がなかったことでしょう。どちらかといえば、トーマスクルー全体が一丸となって生み出したオールラウンドノーズライダーの集大成とも言えます。オージーカインドフレーバーをダイレクトに感じたいならKeeper2.0でも良いでしょうが、マリブに関しては国色関わらずのオールラウンド性能。これから世界的にまだまだ人気が出ていくと思います。でも、総合的にこれまでの流れを振り返ると、自分自身としてはやっぱりハリソンコンセプトが素晴らしいなと思うわけです。2021年の興奮は今も覚めやらぬまま、今日の自分を形成しています。

 

今シーズン、どのロングボードで楽しむかは、皆様の自由です。心の赴くままでいいと思います。ただし、いろんなことに踊らされないでください。結局は各々のインスピレーションが、サーフィンのみが与えてくれる最高体験へと導いてくれる、唯一にして最短の道筋です。

 

昨今のロングボードシーンを見ていると、非常に胸が痛むのと、強い責任を感じます。僕はロングボードがロングボードとして正しく後世に残るように、それらの要素を勉強し体現してきました。ただし、伝わらないこともある。変えられないこともある。そんなことがわかったのが2021年。世の中とは、こう動くのか。こう流れるのか。あほくさ。でも、そこにスタックしていた自分。そのせいで、この4,5年は悩みましたね。ロングボードの行く末など、どうでもいいや、知らん。と。そこにきて、自分にとってのロングボードが、より純粋にむき出されました。変わらず自分の好きなロングボードを信じるしかないわけで、それとまったく別のところでロングボードはみんなに愛されています。それでいいのに、ね。ようやく少しわかった気がします。あとはここから成長あるのみ。

 

ひどく乱文なアウトロで、本当にすみません。書きたいことが定まらず。編集さんもいないので、笑

詳しくはお店でトークしましょう。

 

トーマスサーフボードは随時オーダーを受け付けています。

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Yuta

↑2018年6月、マリブで開催されていた「Surf:Relik / サーフレリック」というコンテストに出場するため、動きを共にしていたころの写真。クラブコンテストや撮影をはじめ、ダクトテープ/サーフレリックなどなど、幾度となくマリブを訪れてきた。その間にあらゆるタイプのロングボードに乗ったハリソンのライディングを見てきたが、冒頭に書いた2021年のライディングは、後にも先にも見ることができない、パーフェクトな代物だったと死ぬまで語り続けたい。

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